メタバースを用いた大学教育について
世界の様々な大学において、メタバースを使用した教育やメタバースについて学ぶことの出来る学部が増えてきています。
今回の記事では、日本や世界の大学でどのようなメタバース教育が行われているのか例を挙げながら紹介していきたいと思います。
世界のメタバースを扱っている大学の例
スタンフォード大学(アメリカ)
アメリカのスタンフォード大学では、「Virtual People」というMeta社が開発したVRヘッドセットを使用した授業を行っています。
VRヘッドマウントディスプレーを導入したことによって、今までイメージすることが困難であった学習がより具体的に学べるようになりました。
その中でも印象的な授業内容は、普段体験できない世界がリアルに感じられる課外授業です。その例として、人種差別を受けた男性の人生をVR体験でき、人種差別について当事者として考える事ができます。メタバースを活用した授業は、2次元の教科書やディスプレイでは実現できないリアルな世界で、より直観的な学習が出来るようになりました。
また、Meta社も人種差別を題材として人種差別などをテーマにしてVRコンテンツを期間限定で発表していたこともあり、今後もラマダンやアースデイといったコンテンツが発表される予定で、いち早く大学でこのような経験を行うことが出来ることは最先端の教育を行っているといえるのではないでしょうか。
サンダーランド大学(イギリス)
イギリスのサンダーランド大学では、「ビジネス」と「教育」に特化した3Dのメタバースプラットフォームの「Virbela」がコロナが流行しだした2020年から導入されています。
「Virbela」とは、バーチャルオフィス空間で自分のアバターを動かし、様々なコミュニケーションを取ることの出来るプラットフォームです。カリフォルニアのIT企業がこのサービスを開発し、仮想空間内にいるアバターたちは自由に行動することができ、会議やプレゼンまですべてを行うことの出来るものとなっています。オフィスとしての活用以外にも、大学のオリエンテーションや国際会議など様々な用途で使われており、会議費や出張費をコストカットでき、最大の売りは在宅勤務でも、孤独感が和らぎチームの一体感を高められることです。
こちらの写真は、実際の会議のイメージ図です。
日本でも、東京理科大学の工学部でも使用されており世界的に教育機関で活用されているプラットフォームです。
仁川大学校(韓国)
韓国の仁川大学校では、メタバース教育のインフラ構築が進められています。その背景として、仁川市は、「XRメタバース構築事業」を推進している初の地方政府であることが挙げられます。
「より優秀な人材を養成するためにオンラインとオフラインが融合されたメタバース教育、インフラの構築、グローバルレベルの研究所設立と研究インフラの支援、地域及び国家発展アジェンダを含めた地域社会貢献プラットフォームの構築、教育・創業・産学協力・研究を強化する最先端キャンパスの拡張の4つのモデルで本校は更なる発展に挑戦しています。」(出典:国立仁川大学校)
という内容もHPに記載されています。
日本のメタバースを扱っている大学について
順天堂大学
順天堂大学と日本アイ・ビー・エム株式会社は、メタバースを活用した医療サービスの構築に向けて共同研究を始めています。その理由として、コロナウィルスの流行によりオンライン診療が増えていることや臨床現場でもVRやARの研究が進んでいることが挙げられます。
今後行う予定として以下の3つが挙げられます。
・順天堂バーチャルホスピタルの構築
・入院患者が家族や友人と交流できるコミュニティ広場の構築。
・メタバース空間での活動でメンタルヘルスなどの疾患が改善するか学術的に検証
これらの実施によって、患者の満足度向上や医療従事者の働き方改革や医療の質の向上を目指しています。
実際のバーチャルホスピタルのイメージはこのような感じになっています。
(順天堂大学HPより引用https://www.juntendo.ac.jp/news/20220413-05.html)
実際の病院にかなり近いことがわかります。病室から出ることが困難な患者の方であっても仮想空間では病院内を自由に探索出来て他の患者の方とコミュニケーションを取ることが出来るのでストレスの軽減にも繋がるのではないかと思います。
金沢工業大学
金沢工業大学は2021年から試験的にメタバースの導入を始め、2022に学内で実用化されました。
その内容は、金沢工業大学、北陸大学、金城大学短期大学部が合同でメタバースでの学生参加のワークショップを行うというもので、石川県七尾市のIT企業「oVice」のシステムを活用して3つの大学を繋いで行いました。
大学キャンパス風の二次元空間を構築し、学生のアイコンをクリックすると学生の映像が表示され、会話が聞こえたり議論にしている資料が広がったりする仕組みであり、自由に会議に参加することで、実際に参加しているリアリティを感じることが出来たようです。
また、金沢工業大学は、コロナの影響で休止されていた、学生と教員が英語で交流する学内ラウンジをメタバースで再開することを予定しています。
東京大学に日本初のメタバース工学部設立
概要
デジタル技術を駆使し、より多くの人に最新の情報や実践的なスキルの獲得を目指すために設立された教育の場としてメタバース工学部が誕生しました。
これは、東京大学の正式な学部ではなく幅広い年代に学んでもらうための教育プログラムとして設立され、学生向けと社会人向けの2つの講座があります。そのため、東京大学に入学しなくてもメタバース工学部に参加できます。
学生向けのプログラム
学生向けのプログラムは、工学や情報分野に興味を持ってもらえるような内容が多く、工学分野だけでなく、企業やイノベーションについて学べる講座も含まれており、学校では学べないような内容まで学ぶことができるようになっています。
また、初回授業では、メタバースの世界を実際に作るといった体験的な授業を取り入れています。
社会人向けのプログラム
社会人向けのプログラムは、新しい知識やスキルについて学ぶことを支援する内容が提供されています。主な内容としては、人工知能・次世代通信・起業家教育の3つで構成されています。
社会人向けのプログラムは法人単位のみでしか受付していないため、個人で申し込みが出来ないことに注意が必要です。
まとめ
今回の記事では、日本と世界のメタバース教育について紹介しました。海外でメタバース教育が普及しているのはもちろんのこと、日本でも東京大学でメタバース工学部が設立され始めており教育においてメタバースが使用されていることが分かって頂けたと思います。
今後、さらに様々な場面でメタバースが使用されていくのではないかと思います。
アイキャッチ画像 出典:グラデーションメタバースイラスト | 無料のベクター (freepik.com)