メタバース(Metaverse)の分野でAI(人工知能)の活用がはじまっています。仮想現実(VR)や拡張現実(AR)といった新しい体験を可能にするメタバースと、機械学習を活用した高度なAIの融合により、デジタル世界を大きく変革することが期待されます。メタバースでのAI活用について解説します。
メタバースとは
メタバースは、仮想空間と現実世界が融合した新しい体験の場です。3次元の仮想空間に、「AR(Augmented Reality 拡張現実)」※1、「VR(Virtual Reality 仮想現実)」※2、「MR(Mixed Reality 複合現実)」※3、「SR(Substitutional Reality 代替現実)」※4などのXR((Cross Reality クロスリアリティ)※5、技術を活用して現実世界の情報や体験を重ね合わせることで、リアルとデジタルが共存する空間です。
例えばアバター(仮想空間上の分身)を操作し、仮想空間内でさまざまな活動を行えるのが大きな特徴です。ゲームやエンターテインメント、ショッピングなどのコンテンツを楽しめるほか、リモートワークや教育の場としても活用が期待されています。
空間や場所の制約を超え、現実とデジタルが自在に行き交う融合現実が、メタバースの提供するサービスの本質といえ、テクノロジーの発展とともに、メタバースはさらに現実世界に近付いていくと考えられます。
世界のメタバース市場は、2022年に655.1億ドルだったものが2030年には9,365.7億ドルまで拡大すると予想されており、今後の成長を見込んでビジネスの参入も相次いでいます。ただし、日本においてはほとんど利用経験や興味関心も少ないのが現状です。裏を返せばこの状況はビジネスチャンスとも考えられます。
※1:AR、日本語では「拡張現実」を意味し、身近なものでは「ポケモンGO」に活用されています。
※2:VR、日本語では「仮想現実」を意味し、VRヘッドセットを装着し視覚的に現実世界を遮断し、デジタル上に再現された仮想空間をその場にいるように体感できる技術です。
※3:MR、日本語では「複合現実」を意味し、ARと同様に現実の景色にデジタル情報を重ね合わせる技術ですが、ARと比べると情報量が大きい点が違いで、ARは視界に文字情報や2D映像を重ね合わせる程度ですが、MRでは3Dオブジェクトなどダイナミックになります。
※4:SR、日本語では「代替現実」を意味し、現実とは違う事象を現実であるかのように錯覚させる視覚技術になります。
※5:XR、現実世界と仮想世界の組み合わせにより新たな体験を生み出す技術です。AR、VR、MR といった技術の総称になります。
出典:総務省(2023)「ICT基盤の高度化とデジタルデータ及び情報の流通に関する調査研究」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r05/html/datashu.html#f00042
メタバースについてはこちらの記事もご確認ください。
AI(人工知能)とは
最近「AI(Artificial Intelligence 人工知能)」についてニュースなどでよく耳にすると思います。AIとは人間の知能をコンピューターに模倣・実現させる技術です。機械による学習、推論、判断といった知的な処理を可能にするため、さまざまな分野で活用が進んでいます。
AIには大きく分けて2種類あり、ルールベースのAIは、人間が作ったルールに従って動作します。一方、ディープラーニングなどの機械学習は、大量のデータからパターンを自動的に学習し、そこから知識を獲得します。
AIは、これまでコンピューターが得意とし難かった認識や予測、意思決定などの領域で大きな能力を発揮し、例えば画像や音声の認識、自然言語処理、推薦システム、ゲームの戦術分析など、さまざまな場面で活用されています。
今後のAI技術の発展により、さらに高度な知能の実現が期待されていますが、倫理的課題や制御の問題など、解決すべき課題も残されています。
AIのなかでも生成AIの活用はより一層広がって行くことが予想され、生成AI市場の世界需要額は年平均53.3%で成長し、2030年には2,110億ドルに達成し2023年の約20倍となる見込みです。日本市場も1兆7774億円になるとみられ現在と比べ約15倍に拡大の見込みです。
出典:JEITA、生成 AI 市場の世界需要額見通しを発表
https://www.jeita.or.jp/japanese/topics/2023/1221-2.pdf
メタバースでのAI活用
メタバースでもさまざまな場面でAI技術が活用されています。メタバースを制作するには、3Dモデリング、3DCG、ゲームエンジン、プログラミングなど広い領域の知識が必要になり、例えば画像生成AIによる2D画像の自動生成、GPTなどでプログラム作成支援など生成AIがメタバース制作の簡略化とユーザーにとってもスムーズな会話など、よりメタバース市場の発展への貢献が期待されます。
1. メタバース制作の構想
アイデアの整理などを行いイメージを具体化させる工程で、画像生成AIツールを活用してテキストから参考画像などを生成し下絵作成に活用できます。
2. モデリング工程
モデリング工程での3Dモデルの制作では、モデリングツールを用いて点、線、面で形状を作る3DCADと彫刻の複数の方法があります。アバター制作の場合には、作成した3Dモデルにモデリングした物体を動かす仕組みの「リグ」を通して、リグの動きに応じて周囲の面を変形させて体の動きを表現させますが、ここにもテキストや画像から直接3Dモデルを生成するAIが活用できます。
3. アバターの動作制御
アバターの自然な動作や表情、リップシンクなどを実現するために、コンピュータービジョンやモーションキャプチャーなどのAI技術が利用されています。
4. 対話エージェント
自然言語処理のAIを応用したバーチャルアシスタントが、ユーザーとの対話を円滑に進行させます。質問に答えたり、タスクをサポートしたりと、情報提供の役割を果たします。
翻訳技術を利用することで様々な言語のユーザー同士のコミュニケーションがスムーズに行えます。
5. 不正の検出
AIにより異常な行動や不適切な発言、不正取引、詐欺被害などの防止に活用可能です。
メタバースでのAI活用では、制作の工程で専門的な知識や技術を必要とする従来の製作工程を簡略化させ、メタバース空間でも革新的な体験やサービスが提供できるようになります。一方で、現在の生成AIには著作権などの法律的な課題も存在します。また、下絵やモデリング工程では細かな変形や改造、複写などができず、完成度としてはオリジナルにするには適さない場合もあります。
AIをメタバース制作の一部に取り入れるには、メタバースの知識はもちろん、AIの知識と技術が必要になり、個人ではまだハードルが高くなります。
メタバースに利用されるAIツール
ここでは実際にメタバースの制作や運営時に活用されるAIツールについて紹介します。
Midjourney
メタバース制作の構想においては、「Midjourney」などの画像生成AIを用いて、テキストから参考画像などを生成し下絵の作成などで活用されます。
出典:Midjourney
https://www.midjourney.com/home
Midjourneyについてはこちらの記事もご確認ください。
Luma AI
モデリング工程では、「Luma AI」という物体などを撮影するだけで、3Dモデルを生成することができるAIツールが活用されます。
出典:Luma AI
https://lumalabs.ai/interactive-scenes
DreamFusion
こちらもモデリング工程で、「DreamFusion」という2D画像で作成したモデルで3Dモデルを生成することが可能です。
出典:DreamFusion
https://dreamfusion3d.github.io/
Project CAIRaoke
「Project CAIRaoke」は、Meta社が開発したメタバース用AIアシスタントです。現状、メタバース内ではPCやスマホのような直感的な操作は難しく、音声や目線などの情報を元に操作をアシスタントするAIです。メタバース空間で感じる操作のストレスの軽減になります。
出典:プロジェクト CAIRaoke
https://ai.meta.com/blog/project-cairaoke/
Builder Bot
「Builder Bot」は、音声でメタバース空間を構築できるAIツールです。メタバース空間を構築するためには、3D空間内にオブジェクトを配置したり、アバターを作成したりする必要があり、時間がかかるうえに専門的な知識も求められます。これは、「〇〇を追加して」のように命令するだけでメタバース空間にオブジェクトを追加できるようになります。
出典:Builder Bot demo
https://www.youtube.com/watch?v=62RJv514ijQ
メタバースとAIの未来
メタバースとAIの技術は日々進化を遂げており、両者の融合によってさらに新しい体験や価値が生み出されると期待されています。まず、AIの高度化により、メタバース内でより自然で現実に近い体験を提供できるようになり、アバターの動作や表情、会話のリアリティが飛躍的に向上し、仮想空間と現実世界の境界線がさらに曖昧になっていくと考えられます。また、AIによる自動コンテンツ生成が進むことで、メタバースのコンテンツが豊富になり、エンターテインメント性が大幅に高まります。ユーザー、一人ひとりの嗜好を反映し、パーソナライズされたコンテンツが提供可能です。
AIを搭載したデジタルツインなどの技術がメタバースでも活用されれば、現実世界のモノやシステムをデジタル上で的確にシミュレートできるようになります。
日本ではメタバースとAIについては世界と比較しても、認知と利用体験ともに乏しいです。ただし、ここにビジネスチャンスがありますので、積極的な活用がこれから必要になります。
まとめ
メタバースのAI活用は、制作側とユーザー側ともに恩恵があります。メタバース空間の制作の効率化や、シームレスでストレスの少ない体験が可能になります。ただし、現在のAI技術には著作権などの法律的な課題も存在する事は事実です。また、3D制作でもいびつな形状になったりと思うように行かない部分も多く存在します。ビジネスでメタバースを構築するのであれば、プロに相談することが近道になります。制作するにはノウハウや技術の習得と学習コストが大きくなります。
最近メタバースを利用した企業の取り組みが増えてきていますが、まだ日本では認知度も利用体験も少ないのが現状です。今からメタバースをビジネスに取り入れてはいかがでしょうか。ぜひ、メタバースのプロ集団「modegination(モデジネーション)」にご相談ください。
チーム名:3Dクリエイターチーム “modegination”(モデジネーション)
ホームページ:https://modegination.com/
Instagram:https://www.instagram.com/modegination/
Tiktok:https://www.tiktok.com/@metaverse.vr
【過去実績】
・ 八代亜紀メタバースライブ参画
・ メタバース神社で護摩を実施
・ プログラミングを駆使し、メタバースサッカーを作成
出典:https://modegination.com/aboutus/